橋本忠雄ブログ

2019年12月 5日 15:04

短歌の部屋(74)

最近、「短歌の部屋」を更新できていませんでした。というのも、「白珠」30首詠に投稿したり、「出かける医療」を本にしたり、ウイグル自治区に旅行をしたり、落語の練習をしたりと、かなり忙しかったからです。

実は、2番目の孫・高校2年生(孫は8人おりますが、1番目が男の子、2番目が女の子です)が短歌に興味を持っていて、昨日我が家に泊まりに来たのです。そして、彼女との会話の中で「おじいちゃまの短歌の部屋を楽しみにしてたのに!」と、言われて長い間ご無沙汰していたのを思いだしました。ということで、久しぶりに記事を書いてみることにします。

まずは、小谷先生からのメッセージを載せてみます。重要なことを述べておられると思うからです。

言いたいことを言ってしまわないために

1.短歌は「言葉で伝える以上のことを伝えるものだ」ということを経験すること。そのためには、近代短歌の名作を繰り返し読んで、作品が言葉以上のものを伝える、あるいは言葉では伝えられないものまで直感によって伝えようとしている所を体験するとよいであろう。いい作品はしばしば作者の意図をも越える。

2.何らかの思想的、倫理的、政治的な訴えを短歌形式にして伝えるのが目的の短歌グループに参加している人は要注意。その場合は、言いたいことを明確に言葉に出して言って印象づけるのが目的であるから、文学としての短歌を創るのとは方向が全く違ってくる。(どちらかと言うと、狂歌、道歌などの方向に近い)。

そして、近代短歌の例として、下記のような歌をあげておられました。

君かへす朝の舗敷(しきいし)さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ

北原白秋

死に近き母に添い寝のしんしんと遠田のかはづ天に聞こゆる 

斎藤茂吉

向日葵は金の油を身にあびてゆらりと高し日のちひささよ 

前田夕暮

夕焼空焦げきはまれる下にして氷らんとする湖の静けさ  

島木赤彦

人も 馬も 道ゆきつかれ死ににけり。旅寝かさなるほどのかそけさ

釈 超空

白埴(しらはに)の瓶こそよけれ霧ながら朝はつめたき水くみにけり 

長塚 節

なるほど、みんな名歌ですね!

前田夕暮の歌などは、高校の時に国語の時間に習ったのですが、いまだにその時の印象が強く心に残っています。先生の指摘されたことは、よく理解できます。しかし、水原紫苑さんのこんな歌はどう理解すれば良いのでしょうか?

フクシマや山河草木鳥獣虫魚砂ひとつぶまで選挙権あれ 

水原紫苑『光儀』

この歌に関する大口玲子さんのコメントを書いてみます。

——— 「フクシマ」や「選挙権」という時事的な語彙が目立つが、眼目は「山河草木鳥獣虫魚砂ひとつぶ」である。「選挙権あれ」には、「あってほしい」という願望の意味よりも、本来の「命令」に近い強いニュアンスが込められているのではないか。その命令に応えるべきは「フクシマ」や「選挙権」のシステムを作った人間。その魂を揺さぶるような歌である。

たしかに、名歌だと思います。この歌は、政治的な訴えには違いないのだが、スローガン短歌ではなく、文学作品にまで昇華されているのではないか。現代に生きている我々は、この国の政治や経済の状況に鈍感であるわけにはいかず、歌を詠うものにとって避けては通れない課題だと思う。先生の注意されたことに留意しながら、「言いたいことを言ってしまわない」文学としても通用する短歌を詠むことが、現代に生きている我々の大きな課題だと思うわけである。

 

 

 

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