本多勝一著 金曜日 3000円
「日本人にとって、広島、長崎、東京大空襲等々の被害の記録を残すことはもちろん大事ですが、それと同時に加害の記録を残すことはもっと大事ではないかと、考えていました。」これが本多氏の問題意識である。
軍隊が虐殺したり、強姦したり、略奪したりするのは、珍しいことではない。
史上一番酷いのは、アメリカがやってきた侵略や虐殺である。最初は、アメリカ原住民を殺しながら、彼らの土地を奪った。それから南米に、ハワイに、フィリピンに、その延長上にベトナム戦争や朝鮮戦争、イラクへの侵略がある。
アメリカやドイツと、日本の侵略の違う点は、日本人は自分たちの侵略を反省するということがないところである。それどころか、南京大虐殺なんてなかったんだという、右派の言論がいまだに大きな力を持っている。その証拠に、日本人は戦争犯罪人を首相にまでしたし、その子孫らをいまだに政治の要職につかせて恥じるところがない。それは、日本人の民度の低さとジャーナリズムが機能していないからだ、と、本多氏は言う。
南京大虐殺があったことは、先日最高裁で、被害者『夏淑琴』さんが訴えていた裁判で、彼女をにせの被害者だと著書の中で記述していた中野修道氏に対して、賠償が命じられたことからも、はっきりしている。
いまだに、そんな著書が発行されている状況自体が、日本の危機を表しているのである。
本多氏の聞き取りという調査方法は、なかなか説得力を持つものである。
彼は、対象者の話を聞くときに、絵を描くように聞くのだという。例えば、虐殺のあった現場が、揚子江の川岸だったとすると、当然その風景を考える。空があったり川があったりする。その時、空は曇っていたか、雨が降っていたか、そういうことがなければ風景は完成しないわけです。証言を聞く人に、すべて詳しく聞いていく、という方法を採っております。
なるほど、そういうふうに取材してゆけば、細部まで詰められるわけで、細部があやふやな証言は、価値が低いので捨てるということになる。
こういう取材方法は、なかなか確かなものだと思われる。
この本は、裁判記録や対談やシンポジウムなどの記録が満載されている。
南京攻略をした軍隊の侵略の道筋、日本軍の特性、軍人はいかに集められたか、陸軍と海軍の関係、虐殺した人数の数え方、強姦の状況、天皇はどこまで知っていたか、日本は何故戦争犯罪を総括してこなかったのか、ジャーナリズムの現状、南京事件研究の現状と課題 等々。
そして、右翼の攻撃に晒されている(家族にまで、命の危険を感じたという)本多氏は、言う。
「自分こそ真正の右翼なのだ」、と。
―― すくなくとも真摯な右翼であれば、その基本に「愛国」あるいは「愛民族」的心情の存在が必須でしょう。そうであれば、こんなことをして周辺のアジア諸国から警戒され、反発され、憎まれることによって、将来の日本がまたしても「八月十五日」に至る道を歩むことになり、それはもはや1945年当時よりもはるかに深刻な、民族の危機を招くことになりかねず、「愛国」とは正反対の「亡国」をもたらすのですから。
本多氏のこの視点は、正しいと思います。間違ったことを反省する勇気こそ、周りからの信頼を得る唯一の方法だと思えるからです。 09年3月29日



























