橋本クリニック

クリニック院長 橋本忠雄ブログ

思考停止社会

橋本忠雄 (2009年5月 7日 08:19)

郷原信郎 著   講談社現代新書  740円sikouteisi.jpg

小沢代表の西松建設からの政治資金問題について、TVに頻繁に登場されるよ
うになったので、著者の顔を知っておられる方も多いだろう。

 私も小沢代表や、カレー事件の林真須美さんに対する報道の仕方に、大きな違和感・疑念を持っている。(勿論、医療現場も偏見に満ちた、現場を知らない非難だけの報道にどれほど、苦しまされていることか)。


  私たちの社会は、寛容という態度を失い、とてつもなく生きづらい社会になってしまったようだ。
 小沢代表に対するバッシングの嵐によって、政権交代が難しくなってきた。
つい最近まで、あれほど多くの国民が望んでいた政権交代が、思考停止したマスメディアの報道によって、実現できなかったとしたら、報道の責任は余りにも重い。

 また、林真須美さんに対する死刑判決が最高裁で出たが、物的証拠もなく、動機もない事件で、何故死刑が言い渡されるのだろう?(疑わしきは罰せず、100人の犯罪人を逃すとも、一人の無実の人を罰するなかれ、というのが、法の建前ではないのか)。
  マスメディアが、真須美氏が記者たちにホースで水をかける姿を、連日洪水の如く垂れ流したが、あれが「彼女は毒婦だ」との強烈な印象を国民の中に刷り込んでしまった。それが、世論を形成し、                                         無実の人間を殺すのだとしたら、その責任は誰がいつ取るというのだろうか?

 こういう視点を持ってこの本を読むと、いろんな問題や事件で納得すること
が多い。
第1章:食の「偽装」「隠蔽」に見る思考停止
第2章:「強度偽装」「データ捏造」をめぐる思考停止
第3章:市場経済の混乱を招く経済司法の思考停止
第4章:司法への市民参加をめぐる思考停止
第5章:厚生年金記録の「改ざん」問題をめぐる思考停止
第6章:思考停止するマスメディア
第7章:「遵守」はなぜ思考停止につながるのか
終章:思考停止から脱却して真の法治社会を

 私自身、この本を読むまできっちりとは理解していなかった問題も多い。
例えば、不二家は潰れねばならなかったほど、悪いことをしたのか?
伊藤ハムは隠蔽したのか? 強度偽装データは犯罪ではあるが、その後、建築
関係をはじめ、ここまで世の中が不況になったのは、何故か?
 村上ファンド事件やブルドックソース事件が、日本経済を落ち込ませた原因
は? (著者はここで、経済司法の重要性を説く)。
 裁判員制度の恐ろしさ、保険料滞納を解消するための「遡及訂正」は悪いの
か? 「朝ズバッ」の大きな問題点 etc・・・・。 


マスメディアの報道は、問題の根本や現場の状況を理解せずに、視聴率さえ
取れればいいという状態になっており、そこから溢れ出てくる報道に、国民が
思考停止させられているということである。

私たち、心して報道に接しなければならない。報道に流されることなく、自
分の頭で考える習慣をしっかりと身につけたいものである。
そうでなければ、黄門様の印籠を見せられただけで、権力の前に平身低頭し
てしまうだけの人間になってしまうだろう。そんな国民に未来がある筈がない。  
                                                                    

                                                                                        09年5月7日