橋本クリニック

クリニック院長 橋本忠雄ブログ

厚生労働省崩壊

橋本忠雄 (2009年9月14日 16:02)

木村盛世著  講談社  1500円

厚生労働省崩壊.jpg著者の父は、開業医でありながら、WHOの副議長を務め、BCGワクチンの
キャンペーンをしていた人。貧しい人からは、診療費を受け取らず、外国の文
献にはたえず眼を通し、最良の治療をするように心がけていた人。
 彼女が、そんな父と母から学んだことは、「人と人との信頼関係がいかに強固
なものであるか、そして、その関係は社会的な立場を超えて結びつくというこ
と」であったそうである。
 そんな人だから、ここまで正義を通し、厚労省の役人たちを敵に回してでも
戦い続けることができているのだろう。その強さは、驚嘆に値する。

    上司に異議を申し立てる彼女は、左遷され、検疫所に赴任した。彼女を検疫
所に送った表向きの理由は、"SARSや新型インフルエンザなどの未知の感染症
に対する水際での防疫を強化する"ことにあったが、検疫を強化する部門の検
疫衛生課にはドクターの彼女1人、看護師1人、事務職の係長2人、係員2人
しかいなかった。それでどうやって、この港の感染防御ができるというのでし
ょうか? というのが、彼女がまずい抱いた感想でした。全く日本の防疫体制
は役に立たないようです。

彼女が指摘している厚労省の内情を、少し記述しておきます。
1. 医系技官は、通常の事務官と同じか、多少医学知識のある事務官といっ
た程度のものです
2. 医系技官の知識の少なさもさることながら、「国民の医療・健康問題を自
分たちが担っている」という意識があまりにも薄いのです
3. 彼らの目的は、自分たちの時代には問題が起こらず、平和に天下りをし
たいという自己防衛だけなのです
4. 厚労省に限らず、本庁の課長は偉いのです。どれくらい偉いかというと、
大企業の社長くらい偉いのです。担当の課長になれば、「メタボ対策のた
めの体操を考えたので、全国の病院で毎日やるように」ということを命
令できるくらい偉いのです
(因みに、著者は、"メタボリック・シンドローム"なるものが存在する
のかどうか世界的なコンセンサスは得られていませんし、メタボ対策が
医療費を抑制するなどという研究は、ごく小さなもの以外お目にかかっ
たことがありませんと、述べている)

しかし、それが事実だとすると(多分真実だと思いますが)、こういう医系技官
だからこそ、外来は5分間以上診察しなければ点数を減らすとか(5分間ルール)、
通所リハビリはリハビリなんだから、送迎の車の中でも、リハビリをしなけれ
ばならない(そんなことをしていたら、事故が起こるではないか!)とか、寝
たきりの人はもともと移動する必要がないのだから、移動という項目は、全介
助ではなく自立だとか、髪の毛がない人は、もともと洗髪する必要がないのだ
から、洗髪は自立だなどという馬鹿らしい通達を出してくるのでしょうね。
本当に、医療や介護の現場はあきれ返っています。

しかし、著者が指摘するバイオテロ(例えば、天然痘を使った兵器)などが起
これば、日本はそれこそパニック状態になるでしょうね。
 オーム真理教が、サリン事件の前に、すでに炭阻菌やボツリヌス菌を培養し
て、生物兵器として蓄えていたという事実は、世界中を驚愕させましたが、テ
ロの標的として、日本が選ばれるという可能性は確かに考えておかなければな
らないものです。軍事だけが核だけが、脅威ではないのです。

さて、民主党は、危機管理を如何に実行していくのでしょうか。
アメリカと対等に渡り合うという鳩山氏の言に、これから注目していきたいと
思います。
                         09年9月13日